理事長 三枝 弘朋
新型コロナウイルスの影響が長引く中で、閉塞感やストレスを感じ、消極的な気持ちを持ってしまいがちです。そのことが家族や友人、同僚など身近な人との人間関係を悪くしてしまうとも言われています。最近、脳医学者などの専門家が、こうした状況だからこそ人をほめることが大切だとアドバイスしています。
専門家によると、脳の中央のあたりにお金をもらったときに反応を示す「線条体」という部分があり、人はほめられるとこの部分がお金をもらった時と同じように反応することが分かっているそうです。つまり、脳にとっては「ほめられること」も「報酬の一種」ということになり、脳のパフォーマンスが上がるということです。ほめられるとうれしくなる理由がよく分かります。
ほめ方にも注意が必要です。誠実、かつ具体的にほめること、また、相手の能力よりも努力をほめることや、他の人と比較してほめないことが大切だと言われています。お世辞やへつらいでは駄目ということです。
しかし、ほめることは簡単ではありません。何と言ったら良いか分からないと感じることもあるかもしれません。まずは、他の人の良いところ、頑張っているところを意図的に探すことから始める必要があります。最初は相手のしてくれたことに対してはっきりと笑顔で「ありがとう」と感謝するだけでも良いかもしれません。ある脳医学者は、「ほめることは相手が喜ぶだけでなく、コミュニケーションをスムーズにし、相互に思考を深めることまで可能にする」と述べています。ですから、ほめることはお互いの益となるので、努力する価値があると言えます。
「適切な時に話される言葉は、銀の器の中の金のリンゴのようだ」という興味深い言葉があります。銀の彫り物の中の金のりんごはとても美しく、高価であるに違いありませんが、ほめ言葉にもそれと同じほど大きな価値があります。果物のりんごとは違い、金のりんごはずっと輝きを放ちます。同様にふさわしいほめ言葉は相手の心にいつまでも残ります。
どんな人にもほめられるところがあります。努力が必要ですが、家庭でも職場でも、どこでもお互いにほめ合って、脳のパフォーマンスを上げ、今の厳しい状況を乗り越えていきたいと感じました。