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施設長 田中敬三

 先日、NHK杯で10連覇をした内村航平選手の体操競技をテレビで見ていたところ、演技が完璧であったことに加えて鉄棒の最後の着地がピタっと決まり、実に見事で演技全体を引き立てるものでした。「終わり良ければすべて良し」という言葉がありますが、体操やスポーツだけではなく人生も同じで、Finale(フィナーレ)やEnding(エンディング)はとても重要なものです。映画やコンサートで最後の数分間を視聴できなかったら、ストーリーは不完全燃焼で面白さも半減することでしょう。
 興味深いことに、高齢者に「人生を振り返って、辛いことと楽しかったことのどちらが多いと感じますか?」と質問しますと、圧倒的に「楽しかったこと」と答える人が多いのです。とても不思議に思えてなりません。戦争も経験したりいろいろ苦しいこともあったと思いますが、現在が幸せだと満足感、幸福感に包まれた状態で過去を振り返るので、過ぎし日の辛いことも薄らいでいくのでしょうか…。今が幸せかどうかということ、そして人生の晩年をどのように過ごすかということは高齢者にとってとても重要なことなのです。
 きっと人それぞれ人生の物語があることでしょう。仮に80歳まで生きた人が8年間施設で過ごすとしたら、実に人生の10分の1という大きな最終章を占めることになります。“終の棲家(ついのすみか)”であるここ特養において利用者のFinale、Ending が幸福なものとなるようサポートする仕事は、人間として真に価値ある貴重な仕事と感じています。ときわ園が理念に掲げているように「利用者が安心して暮らせる福祉施設」となることを願っています。