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衛生管理者 酒井章年

 この言葉は、宇宙飛行士の金井宣茂さんが国際宇宙ステーションに長期滞在する際に掲げたテーマである。金井さんは医師として昨年の12月から約半年間国際宇宙ステーションで過ごし、様々な実験に取り組んだ。それにしても、なぜ健康長寿と宇宙が結びつくのだろうか。実は、宇宙の過酷な環境にヒントがある。
 まず、宇宙では重力の負荷が極めて少ない。そのため、筋力が衰え、骨からカルシウムが溶け出し、筋力低下や骨粗しょう症などで運動機能が衰えてしまうのに似た状態になるという。もし宇宙での筋力低下を防止できれば、寝たきりの予防に大きく役立つかもしれない。また、微小重力の環境下では、かかとから着地する通常歩行が難しい。宇宙空間において、使われている筋肉と使われていない筋肉とを解明すれば、地上での歩行困難などの問題に応用できる可能性がある。さらに、微小重力下では、地上では得ることができない実験環境を実現できる。
 たんぱく質のきれいな結晶を地上で得ることは困難だが、宇宙ではそのような結晶を作り出すことができるのだ。このように、宇宙は、新しい素材や薬の開発に適した環境と言える。今後、微小重力下における様々な取り組みを通して、健康長寿に役立つどのような発見が得られるか楽しみだ。
 宇宙と言えば、今年は火星大接近の年。赤くぎらぎら輝く火星をすでに見たという読者も少なくないだろう。わたしは、時々星仲間と連れ立って星を見に行く。言うまでもなく、火星も見た。口径15cmの反射望遠鏡で150倍の倍率をかけてみる。レンズ上に大きく映し出された赤い星、表面のうっすらした模様、白い極冠・・・、このような火星の生の姿を見たのは初めてだ。火星は2年2か月に一度地球に接近するが、次の大接近は17年後の2035年。健康長寿を願いつつ、その時まで、共に元気でいたいものだ。