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施設長 田中敬三

 「『福祉』とはどんな意味でしょうか?・・・」新しく採用された人たちのオリエンテーションで尋ねることがありますが、いざ答えるとなるとどう表現したらよいのか、なかなかうまく説明できないことがあります。
 大辞林によりますと「『祉(ち)』幸福の意。幸福。特に、社会の構成員に等しくもたらされるべき幸福」と説明されています。ウィキペディアでは、「福祉とは「しあわせ」や「ゆたかさ」を意味する言葉であり、すべての市民に最低限の幸福と社会的援助を提供するという理念を指す」とあります。
 人は年をとって高齢になると食事や入浴、排泄など生きていく上での基本的なことさえ自分でできなくなってしまいます。それで人生の終末期に、尊厳をもって“その人らしい生活”を送ることができるように人のお役に立てるなら、それは人間として真に価値ある尊い仕事と言えます。介護や福祉はまさにその部分に深くかかわる貴重な仕事ですが、幸せなのは介護を受ける利用者だけではありません。聖書の一節に「受けるより与えるほうが幸福である」とあるように、介護や福祉に携わる職員も利用者の幸福そうな笑顔やしあわせそうにしている姿を見る時に確かに「しあわせ」や「幸福」を感じています。
 相互に生み出す「しあわせ」は、人を生き生きとさせ輝かせます。オリエンテーションを受けた新しい職員は、目を輝かせながらここでの新しい仕事に就いていきますが、そうした真摯な姿を見ている私たちも「しあわせ」な気持ちにさせられます。